調査団報告2024年6月

千葉県内で分布拡大中の外来ハゴロモ

近年、外来のハゴロモ類が千葉県内でも確認されるようになりました。見た目が在来のハゴロモ類と酷似していることから、その侵入状況に気が付きにくいです。今号では、千葉県内でよく見られるハゴロモ類に加え、近年になって県内で確認されたチュウゴクアミガサハゴロモについて紹介します。

ハゴロモとは

ハゴロモ類とはカメムシ目(ハゴロモ科やアオバハゴロモ科等)に属する昆虫で、よく見るとセミのような見た目をしています。

アオバハゴロモ(撮影:a0285)

アオバハゴロモ科に属する5-7 mmほどの昆虫です。郊外から都市部にかけた幅広い環境で見られます。たびたび多くの個体で群れていることがあり、容易に発見することができます。

ベッコウハゴロモ(撮影:a0963)

ハゴロモ科に属する6-8 mmほどの昆虫です。都市部でも見られ、夜間には灯火に飛来することがあります。その見た目から、蛾と間違われることがあります。クズやクワ、ウツギ等の植物の汁を吸います。

スケバハゴロモ(撮影:a0285)

ハゴロモ科に属する6 mmほどの昆虫です。雑木林やその周辺で見られます。翅が透けているのが特徴で、たびたび透明な蛾と勘違いされることがあります。

アミガサハゴロモ(撮影:a0285)

ハゴロモ科に属する7-9 mmほどの昆虫です。羽化直後は全身が薄緑色の粉で覆われていますが、しばらくすると粉が落ちて黒っぽくなります。カシの木によく付く昆虫で、雑木林等で見られます。

実はセミ類も同じカメムシ目ですので、両者は近縁な昆虫と言えます。植物食ですが、かじるのではなくストロー状の口を植物に突き刺して汁を吸います。クズ、チャノキ、クワ、カシなどの人が利用する植物を好むことから、我々の身近な環境に生息していることが多いです。大きさは幼虫から成虫の期間を通して、1cm前後のものが多いため見落としがちですが、盛夏にはアミガサハゴロモ、ベッコウハゴロモ、スケバハゴロモ、アオバハゴロモ等の親虫を見かけます。

外来ハゴロモ:チュウゴクアミガサハゴロモ

東南アジアや中国大陸を原産とする外来種で、日本をはじめドイツ、フランス、イタリア、トルコ、韓国などに移入されたことが分かっています。日本国内では住宅街に近い公園で発見され、ツバキの茎や葉に付着した多数の個体が確認されています。日本への移入経路はよく分かっていませんが、国内での分布拡大はハゴロモ自体の飛来に加え、樹木や車両などの移動に便乗し各地へ拡散している可能性が指摘されています。生態系や農業等への影響はよく分かっていませんが、外来種として侵入した朝鮮半島においては、リンゴやブルーベリーなどの果樹の害虫として対策が取られているケースもあるようです。

見分け方

アミガサハゴロモとチュウゴクアミガサハゴロモの形態的特徴(写真:a0389)

アミガサハゴロモの翅には緑色がかった鱗粉が見られますが、チュウゴクアミガサハゴロモにはそのような特徴は見られず、この特徴から2種を区別することができます。ただし、アミガサハゴロモに付いた鱗粉は日を追うごとに無くなっていき、鱗粉が消失した個体はチュウゴクアミガサハゴロモを思わせるような見た目になってしまいます。もう一つの識別点としては翅についた2つの白斑です。アミガサハゴロモの白斑は丸型または四角形をしていますが、チュウゴクアミガサハゴロモでは三角形をしています。ハゴロモ類2種を識別する際は上記の2点を確認し、複合的に判断しなくてはならない場合があります。

千葉県内での侵入状況

千葉県内での情報(論文として公表されているもの)は非常に少なく、印西市で発見された事例が1つある程度です。これは、在来種のアミガサハゴロモと酷似していること、サイズが小さく人に認識されにくいといったことから、実際に侵入していても気付かれにくいためだと思われます。しかし、ここ数年の間に野外で見かけることが増え(大島健夫、私信)、生命のにぎわい調査団の生き物報告フォームにも数例が投稿されるようになりました。

そこで、千葉県内に侵入したチュウゴクアミガサハゴロモの侵入最前線を把握したいと考えておりますので、見かけた際は是非とも写真に収め、生き物報告へ報告いただきたいです。なお、前述のとおりアミガサハゴロモとよく似た姿かたちをしておりますので、翅の色や白斑が分かるよう、なるべく近寄った鮮明な写真を投稿していただけますと幸いです。

参考文献

  1. 伴光哲. 2023. 印西市から発見された外来ハゴロモ Pochazia shantungensis (Chou & Lu, 1977). 房総の昆虫 72: 84
  2. 本橋綾香. 2023. ロウでできた羽衣をもつハゴロモという昆虫. That’s きっとす 令和5 (2023) 年8月号
  3. 外村俊輔・大原賢二. 2024. チュウゴクアミガサハゴロモ Ricania shantungensis (Chou & Lu, 1977) の徳島県からの初記録. 徳島県立博物館研究報告 34: 77-80
  4. 学校法人聖徳学園. オンライン. 岐阜市内でアミガサハゴロモに似た外来種みつかる. https://www.shotoku.ac.jp/information/2022/09/120000post-99.php
  5. 大島健夫. 2023. 千葉の昆虫図鑑. メイツ出版

調査団報告 2024年6月

6月分のデータ(Excel)は以下のリンクよりダウンロードできます

ただし、無許可で報告データを公開することを禁じます

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皆さんからいただく報告の中には、希少な生物の発見、生息状況の新たな発見、活き活きとした生きものの営み等の写真が多くあり、事務局としても大変楽しませていただいています。

外来種対策:外国産の生きもの・外来生物、国内でも他地域の生きもの・移入生物は、野外に放さないでください。
飼育した生きものは責任をもって、最後まで飼いましょう。外来生物によって、日本の在来の生物(植物、動物)は、大きな影響を与えられています。国内、千葉県の生態系と生息する生きものを守るためには、知る、調べる、行動する/駆除するなどが必要になっています。

外来生物に関する情報は

環境省「 環境省HPー外来生物法のウェッブページ 」をご覧ください。

  • 外来生物被害予防三原則
  • ~侵略的な外来生物(海外起源の外来種)による被害を予防するために
  • 1.入れない
  • ~悪影響を及ぼすかもしれない外来生物をむやみに日本に入れない
  • 2.捨てない
  • ~飼っている外来生物を野外に捨てない
  • 3.拡げない
  • ~野外にすでにいる外来生物は他地域に拡げない。
  • お問い合わせ先:
  • 千葉県生物多様性センター
    「生命(いのち)のにぎわい調査団」
  • 〒260-0852 千葉市中央区青葉町955-2
    千葉県中央博物館内
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