中国、台湾、東南アジアに分布する外来種キマダラカメムシの目撃情報が増えています。日本には江戸時代に長崎の出島経由で侵入したと考えられています。近年、このカメムシの生息域が急速に拡大し、既に首都圏にも侵入しています。最近では、千葉県内への侵入も確認されており、千葉市の中心部でも普通に見られるまでになってきました。
しかし、千葉県内のどの地域に侵入し、分布がどの程度まで拡大しているかは分かっていません。そこで、生命のにぎわい通信67号ではキマダラカメムシの発見に関する情報提供を呼びかけました。
その結果、数多くの情報が寄せられてきましたので、今号ではこれまでに得られたキマダラカメムシの分布情報を整理し、作成した分布図を紹介します。
体長2cmを超える大型のカメムシです。日本に生息するカメムシ亜科の中で最大の種類です。背中は黒地に鮮やかな黄色い斑点が多数見られるのが特徴です。
幼虫の時期は、成虫とは似つかない姿をしており、黄色い斑点はほとんど見られません。その一方で、背中には赤色の斑点がいくつか見られ、全体的に白色の産毛が覆うような見た目をしています。
キマダラカメムシはサクラ類、カツラ、ケヤキ、カキ、サルスベリ、ナンキンハゼ等の様々な樹木で見られます。主に見らえるのは活動期の4月から11月頃ですが、冬期でも公園の樹木名プレートの裏でじっとしている越冬個体を発見することができます。これからの季節でも越冬中の個体(主に成虫)を探すことができますので、是非とも探してみてください。
キマダラカメムシは1つの樹に複数の個体が群がっていることがあります。樹木に口を刺していたり(採餌)、交尾している姿(写真上部のお尻を突き合せた2個体)を見ることができるかもしれません。
キマダラカメムシは樹の幹に口を突き刺して吸汁する昆虫です。サクラ等の幹から吸汁する個体が観察されていますが、今のところ実害(樹木の食害)は確認されていないようです。現在までに、生物多様性への影響や人的被害等も知られていませんので、キマダラカメムシを発見したからといって心配しすぎる必要はありません。ただし、今後の爆発的な増加によっては影響が出てくる可能性もありますので、生息状況の変化には注視していくことが望まれます。
なお、冬季には越冬のため家屋内に侵入することがありますので、昆虫が苦手な方にとっては不快昆虫として問題となる可能性はありそうです。
調査団員によって、2019年から2023年までに報告された情報を整理し、キマダラカメムシの分布図を作成しました。図から分かるように、千葉県全域への分布拡大は確認されませんでしたが、県北西部の都市部(千葉市等)を中心に分布が拡大していることが分かります。今後、県南部や丘陵地へと県内の広範囲へと分布拡大してしまうのかは分かりません。そこで、分布図にない地域でキマダラカメムシを発見された際は是非ともご報告ください。
近年になって日本各地での分布拡大が報告されていますが、なぜ分布が広がっているのかは分かっていません。温暖化によって徐々に北上している可能性が指摘されていますし、公園や学校、都市部の街路樹などで発見されることが多いことから、植樹に伴って分布が拡大しているのではないかと考えている人もいるようです。
キマダラカメムシの活動期はまだ続きます。冬季には樹木名プレートの裏側で越冬中の個体を発見することができますので、ご興味のある方は是非探してみてください。
調査団員の皆様へ
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生き物を発見された際はまず、その生き物の写真を撮り、お手持ちの図鑑で調べてみてください。そして、「○○○」だと思うが特徴が少し違う、といったところまで調べていただけると助かります。
報告で種名が不明になっていた場合や、報告写真から判定して種名を変更した場合は、各月の報告一覧には、事務局で判定した種名を記入しています。
皆さんからいただく報告の中には、希少な生物の発見、生息状況の新たな発見、活き活きとした生きものの営み等の写真が多くあり、事務局としても大変楽しませていただいています。
環境省「 環境省HPー外来生物法のウェッブページ 」をご覧ください。