生物多様性ちばニュースレター76号でも紹介したように、千葉市内で外来種のアフリカツメガエルが新たに発見されました(後述の通り、県内の他地域からも捕獲記録があります)。
このカエルは緩やかな流れの環境を好み、普段は水底に堆積した泥の中等に隠れているため、私たちの身近に侵入していてもなかなか気が付きません。そんな中、県民の方から、千葉市内を流れる河川で幼生が捕獲されたため定着している恐れがあるとの情報提供がありました。今号では、ニュースレターでは詳しく取り上げなかった本種の生態や生態系への影響、日本各地への侵入状況等を中心に紹介していきます。なお、千葉市内でアフリカツメガエルの侵入が確認された河川では、地元の活動団体とともに有志による捕獲作業が不定期に行われており、これまでに約40個体が除去されています。
アフリカツメガエルはアフリカ中南部を原産とするカエルで、ほとんど陸地に上がることのない水生のカエルです。成体は平たい体つきをし、幼生は透明なナマズと見間違えてしまいそうな姿をしています。
食性は雑食性で、水中に生息する無脊椎動物(水生昆虫等)や小型魚類、動物の死骸や水草等を食べると言われています。このカエルには舌が無いため、口を開けて餌を吸い込むとともに手を使って餌を口へとかき込みます。一般的なカエルのイメージとして想像されるような、「舌を伸ばして餌生物を捕食する」行動は見られません。
これまでに、神奈川県、静岡県、兵庫県、和歌山県、そして千葉県からの捕獲記録があり、一部地域では野外での繁殖も確認されています(幼生の発見等)。
千葉県内では、1998年頃より佐原市(当時)、神崎町、酒々井町、長柄町、袖ケ浦市等の河川や用水路で捕獲されるようになりました。そして、令和4年に千葉市内を流れる河川から幼生を含めた数十個体のアフリカツメガエルが新たに発見されました(生物多様性ちばニュースレター76号)。
水中に生息する雑食性の捕食者であることから、日本在来の水生昆虫、甲殻類や小型魚類を捕食する影響が懸念されています。例えば、環境省や都府県のレッドリストにおいて絶滅危惧種に選定されているホトケドジョウや様々なトンボ類の幼虫(ヤゴ)を捕食することが知られています。
また、両生類にとって致死的な影響を与え得るカエルツボカビ症の原因菌を媒介することも懸念されています。ただし、カエルツボカビ菌の起源は日本を含むアジアにあり、日本国内の両生類は本菌との長きに渡る共進化によって抵抗性を獲得しているものと考えられています。
日本国内では、アフリカツメガエルは実験動物やペットとして輸入されて流通し、これらが野外へと逸出・遺棄された個体や、その子孫が各地で見つかっています。今回、千葉市内から発見された個体はこれらの理由から野外へ侵入し、定着したものと考えられます。
飼育しているアフリカツメガエルを「逃がさない」または「脱走させない」ことは当然ながら、野外で見慣れないカエルを見かけた際は、是非とも生命のにぎわい調査団の生き物報告フォームへと報告してください。その際は、写真の添付も願いします。これは、新たに侵入した侵略的外来種を根絶する上では、できる限り侵入初期段階で対策を講じることが効果的だからです。
五箇公一. 2020. 人獣共通感染症の生態学的アプローチ~ 生物多様性の観点から感染症リスクを考える. 衛生動物 71(3): 161-170.
松本涼子・諏訪部晶・苅部治紀. 2020. 神奈川県厚木市中荻野地区で捕獲されたアフリカツメガエルとウシガエルの胃内容物について. 神奈川県立博物館研究報告 (自然科学) 2020(49): 85-99.
調査団員の皆様へ
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生き物を発見された際はまず、その生き物の写真を撮り、お手持ちの図鑑で調べてみてください。そして、「○○○」だと思うが特徴が少し違う、といったところまで調べていただけると助かります。
報告で種名が不明になっていた場合や、報告写真から判定して種名を変更した場合は、各月の報告一覧には、事務局で判定した種名を記入しています。
皆さんからいただく報告の中には、希少な生物の発見、生息状況の新たな発見、活き活きとした生きものの営み等の写真が多くあり、事務局としても大変楽しませていただいています。
環境省「 環境省HPー外来生物法のウェッブページ 」をご覧ください。