調査団報告2023年12月

冬でも出会える生き物たち

寒い日が続く冬季は、多くの生き物たちは気温の変化が小さい環境に身を潜め、越冬しています。そのため、哺乳類や鳥類等の恒温動物(自分で体温を調節できる)を除き、生き物たちとの出会いはどうしても減りがちです。しかし、冬季であったとしても、生き物たちの越冬スポットへ足を運ぶと、意外なほど多種多様な生き物たちに出会うことができます。

今号では、冬場の生き物との出会い方と出会える生き物について紹介します。主に水生生物に焦点を当て、水生昆虫や魚類、甲殻類、爬虫類の中からいくつかの生き物について紹介します。

冬場の生き物の探し方

手網で水中に潜んでいる生き物を見つける様子(通称、ガサガサ)

冬場でも遊泳するような生き物は目視で観察することができますが、主に手網等を使って川岸や水生植物、川底等に身を潜めている生き物を探します。また、川底の小石をひっくり返したり、岩を移動してそこに潜んでいる生き物を探したりします。ただし、川岸を破壊したり、水生植物等を踏み荒らしすぎないように注意してください。

なお、漁業権管轄区域においては、手網を用いて魚等を捕獲してよいかどうかを管轄漁協に確認を取っておくと安心です。

水生昆虫

ミズカマキリ(撮影:a0389)

ミズカマキリは名前に”カマキリ”が付くことと、前脚が鎌状になっていることからカマキリの仲間と誤解されることがありますが、実はカメムシの仲間(カメムシ目タイコウチ科)です。この前脚を使って小さな昆虫、オタマジャクシや小魚等を掴み、針のような口先を刺して体液を吸います。

池沼や水田、水路等に生息し、河川内や学校のプール等で見つかることもあります。飛翔することができるため、様々な環境へと移動することができます。川岸や水生植物、浅瀬に溜まった落ち葉の下等をガサガサした際に見つかることがあります。越冬は水中で行われるため、水路や河川等でガサガサすることで一年を通して出会うことができます。

コシボソヤンマ(撮影:a0389)

コシボソヤンマ、オニヤンマ、コヤマトンボ等、多くのトンボ類は卵やヤゴの状態で越冬します。トンボというと夏のイメージが強いかと思いますが、実は冬にも出会うことができます。浅瀬に溜まった落ち葉や川岸を手網でガサガサすることで、多種多様なトンボ類のヤゴを見つけることができます。

なお、ヤゴは非常に似た形態のものが多いので、見つけた個体の種類を調べたい方は、図鑑を持っていくのがおすすめです。

ヘビトンボ(撮影:a0389)

ヘビトンボの幼虫です。名前に”トンボ”と付いていますが、実はトンボ目ではなくヘビトンボ目の昆虫です。成虫も、幼虫と同様に大きな顎を持ち、飛翔します。

水の綺麗な河川の上流域等に生息しており、浅瀬に堆積した落ち葉を網ですくった際に捕獲されることがあります。

カワゲラ(撮影:a1481)

河川の指標生物としても有名なカワゲラをはじめとしたカワゲラ類の幼虫は、浅瀬に堆積した石や岩などの裏に身を潜めています。夏季は石の表面に多数の個体が付いていることがありますが、冬季は丁寧に石を返さないと見つけられないかもしれません。

ヘビトンボと同様に幼虫の時期は水中に生息していますが、成体には羽が生え、飛翔します。

魚類

ヒガシシマドジョウ(撮影:a0389)

河川の中流域などでよく見られるドジョウの仲間です。砂や砂礫等の底質の環境に生息し、砂底によく潜ります。冬季に限らず、このような環境を網ですくうことによって見つけることができます。

東日本を中心に生息し、比較的よく見られる生き物ですが、日本にしか生息していない固有種です。千葉県レッドリストではランクCに選定されています。

ホトケドジョウ(撮影:a0389)

紡錘(ぼうすい)形をしたドジョウの仲間で、日本にしか生息していない固有種です。東北地方から兵庫県までの本州に分布していますが、各地での減少が懸念されており、環境省のレッドリストでは絶滅危惧ⅠB類に選定されています。千葉県内のほぼ全域に生息し、比較的出会いやすい魚の1つではありますが、千葉県レッドリストではランクCに選定されています。

湧水を水源とする湿地や細流、用水路、河川等に生息しており、網を使って探すことで一年を通して観察することができます。

甲殻類

スジエビ(撮影:a0389)

千葉県内には、スジエビ、テナガエビ、ヤマトヌマエビ等の様々な淡水エビ類が生息しています。中でもスジエビは県内のほぼ全域に生息している身近な生き物で(千葉県レッドリストではランクDに選定される)、比較的出会いやすいエビ類の1つです。川岸などを手網でガサガサすると、一度に何個体ものエビが捕まることがあります。先に紹介した魚類と同様に、一年を通して観察することができます。

テナガエビとは体格が大きく異なり、大きなハサミも見られませんが、実はスジエビもテナガエビと同様にテナガエビ科に分類されます。

爬虫類

ニホンイシガメ(撮影:a0012)

カメをはじめとする爬虫類は周囲の温度によって活動性が大きく変化します(一般的には変温動物と呼ばれますが、より正確には外温動物と言います)。カメは気温や水温が低くなる冬季は活動できず、河川や湖沼の岸辺や水底等の緩やかな環境で越冬します。肺呼吸の生き物ではありますが、代謝を低くすることで乗り切ります。この間の呼吸は、総排泄腔(糞、卵、生殖器等が出るところ)内の毛細血管等から水中の溶存酸素を取り込むことで賄っていると考えられています。

冬季のカメ探しは、主に川岸の横穴や淵に溜まった落ち葉等に手を入れ、そこに潜んでいる個体を見つけます。カメたちに好まれる越冬場所があるようで、一部の区間に数個体が密集していることがあります。なお、カメたちは厳しい冬を水中でじっとすることで乗り切ろうとしていますので、観察された際は速やかに元の場所へと戻してあげてください。

冬季のカメ探しについて、より詳しく知りたい方はこちらもご覧ください。

最後に

冬場に入り、生き物を見かける機会が非常に少なくなりました。しかし、自分から探しに行くことで多くの生き物たちに出会うことができます。今回紹介したように、水中に目をやることで、意外にも多種多様な生き物たちが見つかります。「冬は生き物に出会えない」とは思わずに、今まで見過ごしていた場所にも目をやり、そこにどのような生き物がいるのか探してみてはどうでしょうか。なお、川や水路で生き物を探す際は、転んだり、溺れたりしないよう、気を付けながら生き物探しを楽しむようにしてください。

調査団報告 2023年12月

12月分のデータ(Excel)は以下のリンクよりダウンロードできます

ただし、無許可で報告データを公開することを禁じます

調査団報告月別一覧へ戻る

団員の方で、住所/電話番号/メールアドレスの変更があった方は、事務局までお知らせください。

お問合せ先:生物多様性センター 調査団事務局 <monitor@bdcchiba.jp>

調査団員の皆様へ

住所・電話番号・メールアドレスの変更があった場合は、調査団事務局のメールアドレスへご連絡ください。(団員番号と氏名をお忘れなく)
住所・電話番号の変更の場合で、メールを使われない方は、FAXまたは電話にてご連絡ください。

生き物を発見された際はまず、その生き物の写真を撮り、お手持ちの図鑑で調べてみてください。そして、「○○○」だと思うが特徴が少し違う、といったところまで調べていただけると助かります。
報告で種名が不明になっていた場合や、報告写真から判定して種名を変更した場合は、各月の報告一覧には、事務局で判定した種名を記入しています。
皆さんからいただく報告の中には、希少な生物の発見、生息状況の新たな発見、活き活きとした生きものの営み等の写真が多くあり、事務局としても大変楽しませていただいています。

外来種対策:外国産の生きもの・外来生物、国内でも他地域の生きもの・移入生物は、野外に放さないでください。
飼育した生きものは責任をもって、最後まで飼いましょう。外来生物によって、日本の在来の生物(植物、動物)は、大きな影響を与えられています。国内、千葉県の生態系と生息する生きものを守るためには、知る、調べる、行動する/駆除するなどが必要になっています。

外来生物に関する情報は

環境省「 環境省HPー外来生物法のウェッブページ 」をご覧ください。

  • 外来生物被害予防三原則
  • ~侵略的な外来生物(海外起源の外来種)による被害を予防するために
  • 1.入れない
  • ~悪影響を及ぼすかもしれない外来生物をむやみに日本に入れない
  • 2.捨てない
  • ~飼っている外来生物を野外に捨てない
  • 3.拡げない
  • ~野外にすでにいる外来生物は他地域に拡げない。
  • お問い合わせ先:
  • 千葉県生物多様性センター
    「生命(いのち)のにぎわい調査団」
  • 〒260-0852 千葉市中央区青葉町955-2
    千葉県中央博物館内
  • TEL 043-265-3601 FAX 043-265-3615
  • E-mail: monitor@bdcchiba.jp