近年、外来のハゴロモ類が千葉県内でも確認されるようになりました。見た目が在来のハゴロモ類と酷似していることから、その侵入状況に気が付きにくいです。今号では、千葉県内でよく見られるハゴロモ類に加え、近年になって県内で確認されたチュウゴクアミガサハゴロモについて紹介します。
ハゴロモ類とはカメムシ目(ハゴロモ科やアオバハゴロモ科等)に属する昆虫で、よく見るとセミのような見た目をしています。
アオバハゴロモ科に属する5-7 mmほどの昆虫です。郊外から都市部にかけた幅広い環境で見られます。たびたび多くの個体で群れていることがあり、容易に発見することができます。
ハゴロモ科に属する6-8 mmほどの昆虫です。都市部でも見られ、夜間には灯火に飛来することがあります。その見た目から、蛾と間違われることがあります。クズやクワ、ウツギ等の植物の汁を吸います。
ハゴロモ科に属する6 mmほどの昆虫です。雑木林やその周辺で見られます。翅が透けているのが特徴で、たびたび透明な蛾と勘違いされることがあります。
ハゴロモ科に属する7-9 mmほどの昆虫です。羽化直後は全身が薄緑色の粉で覆われていますが、しばらくすると粉が落ちて黒っぽくなります。カシの木によく付く昆虫で、雑木林等で見られます。
実はセミ類も同じカメムシ目ですので、両者は近縁な昆虫と言えます。植物食ですが、かじるのではなくストロー状の口を植物に突き刺して汁を吸います。クズ、チャノキ、クワ、カシなどの人が利用する植物を好むことから、我々の身近な環境に生息していることが多いです。大きさは幼虫から成虫の期間を通して、1cm前後のものが多いため見落としがちですが、盛夏にはアミガサハゴロモ、ベッコウハゴロモ、スケバハゴロモ、アオバハゴロモ等の親虫を見かけます。
東南アジアや中国大陸を原産とする外来種で、日本をはじめドイツ、フランス、イタリア、トルコ、韓国などに移入されたことが分かっています。日本国内では住宅街に近い公園で発見され、ツバキの茎や葉に付着した多数の個体が確認されています。日本への移入経路はよく分かっていませんが、国内での分布拡大はハゴロモ自体の飛来に加え、樹木や車両などの移動に便乗し各地へ拡散している可能性が指摘されています。生態系や農業等への影響はよく分かっていませんが、外来種として侵入した朝鮮半島においては、リンゴやブルーベリーなどの果樹の害虫として対策が取られているケースもあるようです。
アミガサハゴロモの翅には緑色がかった鱗粉が見られますが、チュウゴクアミガサハゴロモにはそのような特徴は見られず、この特徴から2種を区別することができます。ただし、アミガサハゴロモに付いた鱗粉は日を追うごとに無くなっていき、鱗粉が消失した個体はチュウゴクアミガサハゴロモを思わせるような見た目になってしまいます。もう一つの識別点としては翅についた2つの白斑です。アミガサハゴロモの白斑は丸型または四角形をしていますが、チュウゴクアミガサハゴロモでは三角形をしています。ハゴロモ類2種を識別する際は上記の2点を確認し、複合的に判断しなくてはならない場合があります。
千葉県内での情報(論文として公表されているもの)は非常に少なく、印西市で発見された事例が1つある程度です。これは、在来種のアミガサハゴロモと酷似していること、サイズが小さく人に認識されにくいといったことから、実際に侵入していても気付かれにくいためだと思われます。しかし、ここ数年の間に野外で見かけることが増え(大島健夫、私信)、生命のにぎわい調査団の生き物報告フォームにも数例が投稿されるようになりました。
そこで、千葉県内に侵入したチュウゴクアミガサハゴロモの侵入最前線を把握したいと考えておりますので、見かけた際は是非とも写真に収め、生き物報告へ報告いただきたいです。なお、前述のとおりアミガサハゴロモとよく似た姿かたちをしておりますので、翅の色や白斑が分かるよう、なるべく近寄った鮮明な写真を投稿していただけますと幸いです。
調査団員の皆様へ
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生き物を発見された際はまず、その生き物の写真を撮り、お手持ちの図鑑で調べてみてください。そして、「○○○」だと思うが特徴が少し違う、といったところまで調べていただけると助かります。
報告で種名が不明になっていた場合や、報告写真から判定して種名を変更した場合は、各月の報告一覧には、事務局で判定した種名を記入しています。
皆さんからいただく報告の中には、希少な生物の発見、生息状況の新たな発見、活き活きとした生きものの営み等の写真が多くあり、事務局としても大変楽しませていただいています。
環境省「 環境省HPー外来生物法のウェッブページ 」をご覧ください。