◎ヒメコマツ回復計画(平成27年3月31日 改訂)
ヒメコマツは山地性の常緑の高木で、樹高約 30 m、胸高直径 1 m に達するマツ科の針葉樹です。房総丘陵の個体群は、本種の標高的な分布下限であるとともに、気候的に最も温暖な地域の一つに分布する特異な個体群として、学術的に非常に重要です。 |
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ヒメコマツの稚樹 |
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生き残ったヒメコマツ |
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しかし、房総半島のヒメコマツは、1970年代以降マツ材線虫病の影響などにより急激に個体数が減少し、現在、自生する成木は80本程度となってしまいました。また、自生する若い個体はほとんどなく、天然更新がさまざまな要因により阻害されていることが明らかとなり、県内の個体群の絶滅が危惧されています。 |
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※こちらから千葉県ヒメコマツ回復計画(PDF:約1.1MB)をダウンロードできます。
ヒメコマツ観察会の参加者募集を行います(平成31年1月18日(金)締切;平成31年1月27日(日)実施)。※終了しました
房総丘陵のヒメコマツ(別名ゴヨウマツ 五葉松)は、氷河期の遺存種と考えられており、生態学的にも貴重な個体群です。かつては数千本単位で生育していましたが、さまざまな要因で75本にまで減少してしまいました。千葉県では本種を「最重要保護生物」に選定し、平成21年度に「ヒメコマツ回復計画」を策定して保護・回復事業を行っています。平成27年度からは「ヒメコマツ系統保存サポーター」として広く一般の皆様にもヒメコマツ保護にご協力いただいています。
房総丘陵にわずかに残されたヒメコマツ自生地をご案内しますので、ふるってご参加ください。案内チラシもご覧ください
・日 時 平成31年1月27日(日),9:40〜14:20 (前日または当日の雨天で中止)
・場 所 清和県民の森とその周辺のヒメコマツ自生地(君津市及び富津市)
・講 師 尾崎煙雄氏 (千葉県立中央博物館 主任上席研究員)
・定 員 20名(先着申込順)
・参加資格 中学生以上、健脚向き。
一部急峻で危険な箇所がある。往復3〜4時間程の舗装されていない山道を歩ける人。
・申込方法 はがき・FAX・電子メールのいずれかで、必要事項[お名前、年齢、住所、電話番号]を
ご記入の上、下記までお送りください。
・申込締切 平成31年1月18日(金)必着。定員になり次第、受付終了。
参加決定者には、当日の詳細に関するご案内をさしあげます。
・宛 先 〒260-8682 千葉市中央区青葉町955-2 千葉県生物多様性センター
TEL: 043-265-3111
FAX: 043-265-3615
e-mail: bdc(a)mz.pref.chiba.lg.jp ((a)を@に変えてください)
ヒメコマツ系統保存サポーターの3次募集を行います(募集・配布:平成30年3月6日(火)〜)。 ※継続中
※クリックして下さい。
平成29年度房総のヒメコマツ観察会のお知らせ(締切:平成29年11月20日)※終了しました
平成28年度ヒメコマツ系統保存サポーター(団体)の募集を行います(募集:平成28年6月16日〜;配布:平成28年6月20日〜)。※終了しました
≪平成27年度の主な取組≫
ヒメコマツ保全協議会の開催: 専門家・行政・NPO等で構成する協議会(平成20年度設置)を継続して開催し、課題の検討を行います。今年度は回復計画(行動計画)の見直しも行います。
生育個体の保全
- 薬剤の樹幹注入等による材線虫予防: 個体数減少要因の1つと考えられるマツ材線虫病の予防のため、薬剤の試験投与とその効果検証を継続して行います。
系統保存と補強
- 系統保存個体の維持管理: 県農林総合研究センター森林研究所、東京大学千葉演習林において、つぎ木クローン個体、実生苗、人工交配苗の維持管理を継続して行います。
- 試験植栽: 豊英島(君津市)での植栽試験個体のモニタリングを継続します。
- 補強試験: かつて生育していた地域の中に設定した2試験区に、平成24年3月に苗木を移植しました。両試験区のモニタリングを行います。
- ヒメコマツ系統保存サポーター: 県民及び県内に拠点を有する団体を対象に第一次ヒメコマツ系統保存サポーターを募集し、苗の配布を行いました。
生育個体および生育環境のモニタリング
- 繁殖状況モニタリング: 結実調査、種子の充実度の調査を昨年度と同様に実施します。
- 生育状況モニタリング: 昨年度に引き続き生育状況の調査を実施します。
基礎的調査研究
- 遺伝的多様性の解明: 遺伝的多様性の解明は、植栽個体や植栽地の選定など、回復計画を実行する上で非常に重要です。今年度は、東大演習林内の成木の周りの実生の調査とあわせて、その遺伝的解析を実施します。
教育活動と社会還元
- 観察会の実施: ヒメコマツの自生地を探訪・観察する行事として『平成27年度房総のヒメコマツ観察会』を開催しました。詳細はこちらをご覧ください。
≪平成26年度の主な活動実績≫
ヒメコマツ保全協議会を継続して開催し、課題の検討を行いました。
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球果をつけたつぎ木苗(上総試験園) |
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生育個体の保全
- 薬剤の樹幹注入等による材線虫予防: マツ材線虫病予防のための薬剤の樹幹注入を行った個体について、ゾエティス・ジャパン(株)の協力を得て注入個体の枝の分析試験を行った結果、薬剤の濃度がかなり下がり、1個体では検出限界以下となりましたが、残り8個体では薬効成分が残存していることが確認されました。
系統保存と補強
- 系統保存個体の維持管理: つぎ木クローン個体、実生苗、人工交配苗の維持管理を行いました。また、さし木試験、つぎ木試験等を実施しました。
- 試験植栽: 平成22年4月に『ちば千年の森をつくる会』の協力のもと豊英島(君津市)で実施した試験植栽について、植栽試験個体の調査を27年3月15日に実施しました。最大の個体は樹高3.5mに達しました。
- 補強試験: かつて生育地であった清和県民の森区県有林内の2カ所に試験区を設定し、平成23年度末に苗木を移植しました。26年8月9日、27年3月2日に調査を行ったところ、植え付けた28本は順調に生育していました。
生育個体および生育環境のモニタリング
- 繁殖状況モニタリング: 着花調査、結実調査、種子の充実度の調査を行いました。野生22個体を調査したところ、球果の数は平成25年度とくらべると現象し、過去6年間でも3番めに少なく、不作といえる状況でした。
- 生育状況モニタリング: 29個体について調査し、平成25年度の調査以降に1 個体が枯死したことを確認しました(11/28)。8月に8個体についてマツノザイセンチュウ感染の有無を調べたところ4個体が感染しており、なかでも多数の線虫が認められた個体が、秋に枯死しました。
基礎的調査研究
- 遺伝的多様性の解明: 天然の成木と実生、また植栽木から遺伝解析用のサンプリングをしました。天然成木については、他県の健全個体群と同様に遺伝的に多様であること、県内の地域間では大きな違いがないことが分かりました。一方、種子は約70%が自殖により作られており、個体群を維持することがとても難しい状況であることが分かりました。
教育活動と社会還元
- 観察会の実施: ヒメコマツの観察会を、清和県民の森とその周辺のヒメコマツ自生地で、平成27年1月23日(金)に行いました。
◆過去の活動実績=平成23年度 平成24年度
平成25年度
≪取組がメディアで紹介されました≫
- 平成26年6月6日/千葉日報/君津青葉高校によるヒメコマツ増殖方法の研究が紹介されました。
- 平成25年5月5日/千葉日報(日刊)/ヒメコマツの危機的な状況と保全活動について紹介されました。
- 平成23年6月15日/日経新聞千葉版/保全の様々な活動について紹介されました。
- 平成23年5月23日/NHKFM(まるごと千葉60分)/ヒメコマツ回復計画について紹介されました。
- 平成23年2月7日/千葉日報/ヒメコマツ回復計画について紹介されました。
- 平成23年1月11日/千葉日報/県森林研究所のヒメコマツの種子生産について紹介されました。
≪公表された成果等≫
- 尾崎煙雄(2014)/房総の絶滅危惧ヒメコマツ個体群の現状と保全の試み/日本植物分類学会誌 Bunrui 14(1):9-18
- 軽込勉・塚越剛史・里見重成・梁瀬桐子・久本洋子・山田利博・米道学 (2013)/房総半島におけるヒメコマツ実生苗のマツ材線虫病抵抗性について/第124回日本森林学会大会
- 礒辺山河・久本洋子・軽込勉・中山さち・逢沢峰昭・大久保達弘 (2013)/千葉県房総丘陵におけるヒメコマツ実生の生育環境と遺伝的特性/第124回日本森林学会大会
- 礒辺山河 (2013)/千葉県房総丘陵におけるヒメコマツ実生の遺伝的組成と生育環境/宇都宮大学平成24年度卒業論文.<東京大学千葉演習林で研究しました>
- 千葉県立君津青葉高等学校環境系/希少種「ヒメコマツ」の後継樹育成/第3回全国高校生環境活動発表会優秀賞受賞.<東京大学千葉演習林が協力しました>
- 尾崎煙雄 (2013)/房総の絶滅危惧ヒメコマツ個体群の現状と保全の試み/日本植物分類学会第12回大会公開シンポジウム「千葉県における植物の個体群保全・生態系再生の試み
- Iwasaki T., Sase T., Takeda S., Ohsawa T.A., Ozaki K., Tani N., Ikeda H.,
Suzuki M., Endo R., Tohei K. & Watano Y. (2013)/ Extensive selfing
in an endangered population of Pinus parviflora var. parviflora (Pinaceae)
in the Boso Hills, Japan./ Tree Genetics & Genomes, 9: 693-705.
- 米道学・塚越剛史・里見重成・軽込勉・鈴木祐紀(2011)/千葉演習林におけるヒメコマツ天然および系統保存個体の現地調査/平成23年度東京大学大学院農学生命科学研究科附属演習林技術職員等試験研究・研修会議報告
- 遠藤良太・池田裕行・鈴木祐紀・尾崎煙雄・藤平量郎(2010)/房総半島産ヒメコマツつぎ木苗の種子生産状況/関東森林研究, 61: 99-102
- 池田裕行・鈴木祐紀・山田利博・尾崎煙雄・遠藤良太・藤平量郎・藤林範子(2008)/房総半島産ヒメコマツの保全活動/関東森林研究, 59: 141-144
- 池田裕行・鈴木祐紀・尾崎煙雄・遠藤良太・藤林範子・藤平量郎(2007)/ ヒメコマツ更新地の林分構造と林床の光環境/関東森林研究, 58: 119-122
- 尾崎煙雄・藤平量郎・池田裕行・遠藤良太・藤林範子(2005)/垂直分布下限のヒメコマツ/森林科学, 45: 63-68
- 池田裕行・遠藤良太・尾崎煙雄・藤平量郎・佐瀬正(2004)/房総半島におけるヒメコマツ保全−人工交配による種子の稔性向上−/林木の育種2005特別:
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取り組みの実施機関・関係機関
- 房総のヒメコマツ研究グループ(保全協議会委員)
- 東京大学千葉演習林(保全協議会委員)
- 関東森林局千葉森林管理事務所(保全協議会委員)
- 君津市農林振興課(保全協議会委員)
- 千葉県中部林業事務所(保全協議会委員)
- 千葉県農林総合研究センター森林研究所(保全協議会委員)
- 千葉県立中央博物館(保全協議会委員)
- ちば千年の森をつくる会・・・試験植栽地の管理等
- ゾエティス・ジャパン(株)
・・・薬剤効果判定試験等