●講演:生物多様性オフセット・バンキング ~代償ミティゲーションから里山バンキングの提案まで~
東京都市大学 環境情報学部 准教授 田中章氏
- 講演内容 -
多様な生物を保全するためには多様な生息地の確保が不可欠です。日本において も世界においても、生息地の破壊や消失の最大原因は人間の開発行為です。
そこで、生物多様性保全のためにはこの人間の開発行為に対して、日本ではまだ導入 されていない、回避→最小化→代償という「ミティゲーション順序」を徹底した
環境アセスメント制度(戦略的環境アセスメント制度)が必要になります。社会 に必要な開発による悪影響についてはやむを得ないので「代償ミティゲーション」 として、事業者の責任(PPP)で、失う自然と同様な自然を同規模以上、復元、
創造、維持、管理することによって当該地域の同様な自然を何とか現状維持しま す。これを「ノーネットロス政策」と言います。近年、国際社会において代償ミ ティゲーションは「生物多様性オフセット」と呼ばれるようになり、既に世界50
カ国以上で法制化されています。生物多様性オフセットを市場経済の力でより促 進する仕組みが「生物多様性バンキング」であり、米国やドイツなど既に数か国 で運用されています。
一方、これらの制度がまったく導入されていない日本では
里山のオーバーユースとアンダーユースによる生物多様性の劣化が深刻化しています。講演者は、日本版生物多様性バンキングである「里山バンキング」を提唱しています。これは、里山生態系の復元、保全、維持管理を目的とし、①野生動物だけのハビタットではなく市民による里山の多様な利用を受け入れること、②里山管理の若い人材を育成すること、③持続的な農林業を推進することなど、欧米の生物多様性バンキングにはない側面を併せ持つもので、北海道下川町、千葉市、横浜市で実証的な研究が始まっています。
●千葉県からの情報提供
里山と生物多様性 ≪千葉県生物多様性センター 北澤哲弥≫
里山とは何か、里山ではなぜ生物多様性が豊かなのか、里山が抱える課題など里山と生物多様性の関係について説明。 参考:生物多様性ゆたかな持続可能な社会に向けて
~ちばの里山里海サブグローバル評価~(pdfファイル:2.2MB)
●事例紹介
取組を行っている事例を紹介していただきました。
・東電環境エンジニアリング株式会社
現状把握から維持管理(調査、研究)までを一括に行うビオトープづくりを行っています。地元種の独自育成を行っています。
・NPO法人ちば里山センター
企業連携による千葉の里山・森づくりプロジェクトなど、里山活動団体や土地所有者、企業・個人を互いに結びつけるサポートをし、里山の保全に努めています。
※本ページは、セミナーの報告のため、記載内容はセミナー開催当時のものです。