千葉県環境生活部自然保護課Chiba Biodiversity Center生物多様性センター

「千葉県の保護上重要な野生生物 - 千葉県レッドデータブック - 動物編」(2000年3月発行)について

平成23年4月26日更新

表紙写真

  1. 背景と目的
  2. 選定の方法
  3. 選定の対象本書が対象とした分類群
  4. 千葉県レッドデータブック共通評価基準及びカテゴリー
  5. 選定の結果
  6. その他

1.背景と目的

  1.  多種多様な野生の動植物は、自然環境を構成する生態系に不可欠の要素でありますが、近年地球規模での自然環境の悪化等から多くの種が絶滅の危機に瀕しているといわれており、野生動植物の保護は国際的な課題となっています。
  2.  このような状況の中で、本県においては、千葉県環境基本計画で掲げた「自然との共生」の理念のもとに「生物多様性の確保」という観点から、県内における絶滅のおそれのある野生動植物の現状と保護のあり方を明らかにするため、この度千葉県レッドデータブック動物編をまとめたところです。
  3.  本書は、法的規制等の強制力を伴うものではないですが、多くの県民の方々に貴重な野生生物の現状を理解し、自然との共生のあり方を考えていただくことを目的として作成したものです。

2.選定の方法

  •  編纂にあたり、11名の専門家からなる「千葉県レッドデータブック作成検討委員会」を設置し、この委員会において、本レッドデータブックが扱う分類群と対象範囲、レッドデータ種選定の基準と選定方法、選定にあたっての情報収集と整理、及びレッドデータブックの記載内容などの全体的な検討を行いました。
  •  種の選定にあたっては、県下における野生生物種の分布状況を把握するため、各種の文献、収蔵標本などの基礎的な情報収集から開始し、とりまとめられた情報から、それぞれの分類群において絶滅の危機に瀕している種を抽出する作業を行ないました。その際、生物種の現在の分布域の広さや個体群の大きさなどの種そのものに関する情報に加え、生息・生育地の減少、採取や捕獲などの圧力の大小など、種の存続に関わる人為的な影響についても考慮しました。なお、分類群によっては、収集・整理しうる情報が非常に少なく、すべての種について客観的に評価できるデータがととのわない場合もありました。それらについては、専門家の知見により共通の評価基準に照らし合わせ、ふさわしい種を選定することとしました。

3.選定の対象

本書が対象とした分類群は、以下のとおりです。

(1) 脊椎動物

  1. 哺乳類
  2. 鳥類
  3. 爬虫類
  4. 両生類
  5. 汽水・淡水産魚類

(2) 無脊椎動物

  1. 昆虫類
  2. クモ類
  3. 陸産及び陸水産甲殻類
  4. 十脚甲殻類
  5. 多足類
  6. 貝類

4.千葉県レッドデータブック共通評価基準及びカテゴリー

レッドデータブックに掲載されることは、対象種が絶滅の危機に瀕していると同時に、その種が保護を必要としていることを示しています。この点を踏まえ、評価基準は保護の必要度の高さから区分がされています。現在、県内で生息・生育が確認されている種のカテゴリーは4段階とし、現在まで長期にわたって確実な生息・生育情報のない、消息不明または絶滅したものを加え、全体で5段階としました。

千葉県レッドデータブック共通評価基準及びカテゴリー
X 消息不明・絶滅生物
 かつては生息・生育が確認されていたにもかかわらず、近年長期にわたって確実な生存情報がなく、千葉県から絶滅した可能性の強い生物。ただし、すでに保護の対象外となったかに見える生物であっても、将来、他の生息・生育地からの再定着や埋土種子の発芽などにより自然回復する可能性もありうるので、かつての生息・生育地については、現存する動植物と共に、その環境の保全に努める必要がある。
A 最重要保護生物
 個体数が極めて少ない、生息・生育環境が極めて限られている、生息・生育地のほとんどが環境改変の危機にある、などの状況にある生物。放置すれば近々にも千葉県から絶滅、あるいはそれに近い状態になるおそれがあるもの。このカテゴリーに該当する種の個体数を減少させる影響及び要因は最大限の努力をもって軽減または排除する必要がある。
B 重要保護生物
 個体数がかなり少ない、生息・生育環境がかなり限られている、生息・生育地のほとんどで環境改変の可能性がある、などの状況にある生物。放置すれば著しい個体数の減少は避けられず、近い将来カテゴリーAへの移行が必至と考えられるもの。このカテゴリーに該当する種の個体数を減少させる影響及び要因は可能な限り軽減または排除する必要がある。
C 要保護生物
 個体数が少ない、生息・生育環境が限られている、生息・生育地の多くで環境改変の可能性がある、などの状況にある生物。放置すれば著しい個体数の減少は避けられず、将来カテゴリーBに移行することが予測されるもの。このカテゴリーに該当する種の個体数を減少させる影響及び要因は最小限にとどめる必要がある。
D 一般保護生物
 個体数が少ない、生息・生育環境が限られている、生息・生育地の多くで環境改変の可能性がある、などの状況にある生物。放置すれば個体数の減少は避けられず、自然環境の構成要素としての役割が著しく衰退する可能性があり、将来カテゴリーCに移行することが予測されるもの。このカテゴリーに該当する種の個体数を減少させる影響は可能な限り生じないよう注意する。

5.選定の結果

本書に掲載された種は、脊椎動物では、哺乳類18種、鳥類141種、爬虫類14種、両生類11種、汽水・淡水産魚類21種の計205種、無脊椎動物では、昆虫類344種、クモ類9種、陸産甲殻類5種、十脚甲殻類23種、多足類31種、貝類96種の計508種で、脊椎動物、無脊椎動物をあわせて713種です。

対象とした在来の脊椎動物は、約520種であり、その内の約39%が本書に掲載されています。この内、爬虫類では全種が、また、哺乳類、両生類ではほぼ全種が掲載されています。一方、在来の無脊椎動物については、依然として記録されていない多くの種が県内に生息していることが予測されますが、現在までに生息が知られている種数は約6,000種と考えられ、そのうちの約500種が掲載されています。

カテゴリーXの消息不明・絶滅生物に選定されたものは、哺乳類3種、鳥類16種、爬虫類1種、汽水・淡水産魚類1種、昆虫類19種、十脚甲殻類1種、多足類6種、貝類17種の計64種類です。さらに、カテゴリーAの最重要保護生物には約150種が選定され、現在多くの種が絶滅の危機に瀕していることを示しています。

掲載種リストダウンロード(Excel95,121KB)

      千葉県の保護上重要な野生生物  分類群・カテゴリー別掲載種数
カテゴリー X A B C D 総計
脊椎 動物 哺乳類 18
鳥類 16 29 32 44 20 141
爬虫類 14
両生類 11
汽水・淡水産魚類 21
       計 21 35 49 64 36 205
無脊椎動物 昆虫類
  カゲロウ目
  トンボ目 20 11 10 51
  カワゲラ目
  ゴキブリ目
  カマキリ目
  バッタ目 18
  ナナフシ目
  カメムシ目 14 10 31
  アミメカゲロウ目
  コウチュウ目 21 16 33 43 116
  ハチ目 13 27
  シリアゲムシ目
  ハエ目 20
  トビケラ目 10
  チョウ目(チョウ類) 12 34
  チョウ目(ガ類) 20
昆虫類小計 19 76 67 94 88 344
クモ類
陸産及び陸水産甲殻類
十脚甲殻類 10 23
多足類 15 31
貝類 17 26 21 22 10 96
       計 43 117 108 128 112 508
      合計 64 152 157 192 148 713

6.その他

  1. 本書は、県内の各市町村、中学校、高等学校、図書館、各地域振興事務所(旧県民センター)に配布してあります。
  2. 問合せ先  千葉県自然保護課 生物多様性センター (電話:043-265-3601)